置されたままと聞いていますが、一体どういうことですか。
赤石 いや、まったく頭の痛い問題です。最近のロシア船の海難による放置事例としては、稚内沖に二隻と根室沖に二隻の計四隻が発生しており、現在も撤去されないまま放置されている船は、平成四年十二月二十七日に根室管内珸瑁瑶(ごようまい)崎の浅瀬に乗り揚げた一隻です。

いずれの船舶もPI保険に加入していなかったり、経営基盤が零細な企業が多いこと等から、船体撤去にかかる作業資用の捻出に非常な困難を生じ、発生から撤去まで長期間を要しております。珸瑁瑶埼に乗り揚げたロシア船の海難原因は、航行中にGPSによる位置を誤認して変針し、その後の位置確認を全くしていなかったためであったことが判明しています。この船の事故発生後、根室海上保安部と地元関係者が一体となり、乗組員の救助及び油流出による二次災害の防止を図るため、瀬取り作業と海上への流出した油の防除作業を実施しました。
西山 まったく大変なことですね。
海洋汚染の心配もありますし、地元の漁業者にとってはどうかすると死活問題になりかねないと思いますが。なにか対策を講じなくてはならない問題ですね。
赤石 当本部は、船体撤去の作業費用の捻出が困難であることを理由に船体の放置が懸念されることから、船長、船舶所有者および荷主等に対して、船体が放置されることにより発生する海洋環境への悪影響を防止する見地から、早期に撤去するよう指導を行いました。
その結果、船舶所有者から早期撤去の確約書の提出と日本側荷受人が輸入物(主としてカニ)代金から費用の支払いをする旨の確約を得ました。
しかし、その後撤去に向けた具体的な動きが全く見られなかったため、当本部および地元関係者により、外務省、国境警備隊等の外交ルートを通じて再三に渡り、撤去を要請しました。また地元の根室市等関係者で「座礁ロシア船撤去問題対策連絡会議」を設立して対応していますが、日本側荷受人からは船舶所有者との契約期間が切れたことを理由に撤去費用の支払いができないとの申し入れがあり、さらに、船舶所有者とは連絡設定もできない状況となっています。
このため、当本部としましては引き続き関係先に対して、放置船の所有者との間で船体の撤去作業の交渉を実施するよう指導を行っています。

被だ捕事件
西山 お聞きすればするほど大変なことがよく分かりますが、一日も早い解決に向けて一層の御努力をお願いします。
それでは、ロシアによる日本漁船のだ捕に関してお聞かせください。
赤石 地元漁民の「北方四島周辺は自分たちの海である」との意識も強いことなどから、ロシア警備艇によるだ捕が後を立たない状況にあります。
被だ捕の理由は、いずれも領海侵犯及び不法漁労です。昨年は被だ捕がなく終わるかと思っていた
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